筆者は建築CGパースの制作を主な生業としているが、数年前から適応出来る物件ではラジオシティ法を実装したレンダラーを使用している。様々なノウハウを蓄積しているレイトレーシング法から、何故ラジオシティ法に切り替えてきているのかを簡単なサンプルモデルを使用して説明したい。

図1はアクソメで見たサンプルモデルで5m×5m×4mの直方体を室内空間と見立て、その中に1m×1m×2mの直方体と半径0.75mの球を置いた。光源は天井面にあたる直方体上面の中心にスポットライトを一つ設置している。図2は実際に設置したカメラのビューで、左右の壁面が青、奥と手前の壁が赤、天井および床面が黄色、二つのオブジェクトはライトグレーに設定している。

図3がレイトレーシング法(以下レイトレ)でスポットライトを影有り(レイトレースシャドウを使用)の光源として設定しレンダリングしたものである。光源があたっている面は明るくなっているがそれ以外と影の部分は黒で塗りつぶしたようになっている。現実の世界では光は物体にあたった後に反射するので光源が直接あたっていない部分にも間接光が届きこのように黒になる事は無い。これを緩和するためレイトレには環境光という簡易な間接光代わりになるパラメーターがあり、これを摘要したものが図4である。図3に比べるとずっと見やすくなったが、天井・壁面の見え方が均一で立体感が薄れている。環境光は各オブジェクトに均一な光を加算するものなので、パラメーターの数値を上げるほど立体感が希薄になっていくという問題点を持っている。筆者は実際の仕事でレイトレを使用して空間を表現する時は環境光を使用せず、間接光の代わりになる複数の光源を設置し、立体感を出す工夫をしている。

図5は図3と同様の設定に光源だけを複数設置し立体感を高めたものである。そこそこ立体感のある絵ができていると思うが、このために追加でスポットライトを6個設置していて、しかも光源ごとに影響を与えるオブジェクトを限定するように設定しないといけないため(床面から天井面を照らすら光源を設置しているが、この光源は天井面だけに影響するように設定している)、煩雑な作業が発生してしまう。またこの様に単純化した空間では光源の増設数もさほど多くないが、一般の室内空間では数十個になる事もざらである。

次に図6を見ていただきたい。これがラジオシティを用いたレンダリング結果である。設定は図3と同様でラジオシティ計算をかけただけであるが、一つのスポットライトで間接光の影響が表現されており色の映り込みも起こっていて、単に立体感だけではなく実在感のある空間内が表現されている。このようにラジオシティを用いる事で、間接光表現を行うための煩雑な光源設定を行うことなく、簡単な設定でよりリアリティのあるイメージを作成できる。