前回はVIZに実装されているパラメータによって空間に生じる不自然な陰影を緩和する方法をお話したが、ここではパラメータ等とは違う根本的な方法(ラジオシティレンダラー全般に通用する手法)で陰影の不自然さを緩和させようと思う。
図1を見て頂きたい。図1は第三回の図1(フィルタ処理)とレンダリングに関してはすべて同一設定で計算したものだが、陰影に違いが出て来ている事がお分かりになるだろうか。二つの図を比較して頂くと図1は第三回の図3(リギャザー処理)のイメージの様に壁面と天井面、壁面と床スラブ面の交わる付近に出てきている帯状の不自然な影が消えている事がお分かりになると思う。実は図1に使用したモデル(図2参照)は前回まで使用したモデル(図3参照)と天井および床スラブの形状が異なっていて、このモデル形状の差異が影を消しているのである(モデル変更に伴い天井と床のマッピングがずれてしまっている事はお許し願いたい)。図2、3を見て頂ければ違いは一目瞭然だが(モデルの違いを分かりやすく表現するため天井と床スラブは半透明のオブジェクトで、その他をワイヤーフレームで表示している)、図2は天井・床スラブのモデルが壁の立ち上がり形状に沿ってモデリングされており、壁オブジェクトの上面・下面(レンダリング時は見えない)と天井・床スラブのモデルが重ならないようになっていて、図3は一般に建築でよく行われるモデリングで、天井・床スラブのモデルが壁の上面・下面と重なる形でモデリングされている。図2の様に面が重ならないようモデリングすれば帯状に出ていた不自然な影を解消することが可能となり、又この様なモデリングが第3回のリギャザーの項目で書いたラジオシティに適したモデリングの基本となる。ラジオシティに適したモデリングについての詳細はここでは割愛させていただくが、実際にラジオシティに適したモデリングを忠実に行おうとすれば面の重なり以外に更に仔細な作業が発生しかなり大変になってしまう。アニメーションではそれなりに対応せざるを得ないが、静止画などはレタッチソフトに依存したほうが賢明だろう。前回お話したようにリギャザーでレンダリングすればモデルに起因する不具合がモデルを弄らずに解消できるし、図3のモデルでもメッシュ分割数をかなり細かくすれば改善方向に向かうが、双方とも品質の向上に伴い計算時間も延びることになる。この辺りがレンダラーの悩みどころであり腕の見せ所でもあるのだが、今回示した天井と床スラブに出る影は建築で良く見られるケースなので、実務ではこの点だけでもラジオシティに適したモデリングを実践し、最終イメージの品質向上だけでなくレンダリング作業時間の短縮にもつなげて欲しい。

