図1を見ていただきたい。この絵は前回までに説明した室内光やデイライトシステムを一切使用せず、光源としてテクスチャー空のみを使用したレンダリング結果である(リファインを使用して陰影のノイズは緩和している)。前回のデイライトシステムを使用したレンダリング結果との見た目の違いは、太陽光が作る直達光の陰影が出ていない事と、壁面が青みがかっている事が挙げられる。テクスチャー空とは、一般のレンダリングで背景の空を球体にマッピングするのと同じようにテクスチャーを無限遠球にマッピングし、そのテクスチャーがもつ色彩を含めた輝度を反映した形で天空光として使用するものである。一般的には、イメージベースドライティングと呼ばれるGIの一種であるデイライトシステムにあったIES空と似ているものだが、使用するテクスチャーを元に天空光の色や強度が変化するので、よりリアルな間接光が表現できる点がIES空とは異なる。図1は昼景の空をテクスチャーとして使用した例だが、デイライトシステムでIES空を使用した前回のレンダリング結果とは単純に比較は出来ないものの、壁面等の陰影やテクスチャーの空の部分が影響した青い光の反映などに違いが見てとれる。また、これまであまり明るくなかった図の中央左の階段部分が明るくなっているが、これは強度が大きい太陽光の影響が無く、全周囲から間接光が室内に入って来ているので、南面から入る天空光と同様の影響が北面に配した窓からも現れているためである(第2回のワイヤーフレームモデルを参照)。
比較のためにテクスチャー空の代わりにデイライトシステムのIES太陽をオフにしIES空だけを使用したレンダリングを載せておく(図2)。どちらの表現が良いかは別にしても、同じ天空光の表現でもこれだけの違いがレンダリング結果として現れる。逆にテクスチャー空を使用する場合は使用するテクスチャーによって光環境にはっきりとした違いが現れるので、空だけの素材以外にも、大自然の風景やビル街の風景など様々なテクスチャーで試行錯誤を行い経験値を高めてもらいたい。


今回はテクスチャー空だけの単一の天空光を扱っているため、テクスチャーの色の影響がレンダリング結果に違和感を与えてしまっているが、実際にはテクスチャー空単体でレンダリングすることは少ないであろうし、またテクスチャーの色の影響が好ましいケースもある。この辺りは次回に述べるとして、最後に取りあえず図1の違和感を抑えたレンダリング結果を図3に載せておく。これは単純にテクスチャーの影響を3割ほど抑えた結果で、簡単に絵を補正できるが、減じられた3割を均一な天空光で補うためテクスチャー空の良い点も薄められることを頭に置いておいて欲しい。
