前回はテクスチャー空の素材が持つ色がレンダリング結果にあまり好ましくない影響を及ぼす例(前回-図1)と、その簡単な解消法(前回-図2)を説明したが、ここでは色の影響が好ましい例を図1にあげる。図1ではテクスチャーに夕景の空を使用している。現実の夕景の場合は太陽光の色の影響を強く受けるので、昼景とは反対にテクスチャーの持つオレンジ色がレンダリング結果に好影響を与える結果となった。昼景と同じ設定のままテクスチャーを夕景に変えただけでは明るめの妙な夕景になってしまったため、ここでは露出制御で全体のトーンを暗めに補正している。使用するテクスチャーによっては状況が変わってくるので、この辺りは適宜調整してみていただきたい。

前回の図1はテクスチャー空のみ使用したレンダリングであるため、テクスチャーの青色の影響がはっきり出る結果となったが、図3ではIES太陽とテクスチャー空を併用した(デイライトシステムを使用して、IES空の変わりにテクスチャー空を使用するよう設定したもの)レンダリングの例を示す。前回の図1でのテクスチャー空の設定にIES太陽を付加した設定としているが、テクスチャー空だけの時の、青色がのった絵から自然に感じる光環境に戻すことができた。これはIES太陽の輝度がテクスチャー空に比べ遥かに高いために青色が緩和された結果である。デイライトシステムの章でお見せした、IES太陽とIES空を使用したレンダリング結果との違いがおわかりになるだろうか。微妙ではあるが違いが見て取れるのではないかと思う。同様にIES空を併用した夕景のレンダリングが図3である。昼景での明るさが足され陰影にメリハリを持たせた結果となった図2とは異なり、日が傾いた太陽光が暗さを逆に演出するような絵になっていると思うが皆さんはどう思われるであろうか。第5章より昼景をメインに夕景までのGIを使用したレンダリング手法を様々なパターンで紹介してきたが、今回お話している図2、図3レベルの表現になってくると、どの手法を使って(あるいはミックスして)レンダリングを行うかという技術的な面よりも、レンダラーとしてどういう絵を表現したいか、あるいは自分の感性をどう絵に織り込むかといったデザイナーの感性が主な問題となり、技術面は後から結果的についてくる形になると思う。いくつか紹介してきた微細な違いを持つレンダリング結果に対して、そのレンダリング手法の習得だけに注力する事無く、微細な違いが持つ絵の表現力の変化を感性で掴んでいただけると、更なるレンダリング技術の向上が果たせるのではないかと思う。

