コンピュータは、インターネットに接続して膨大な情報を「集める」、スキャナなどを利用して物体をディジタル化し「取り込む」、そのデータの整理や加工を短時間に大量に「処理する」、処理した情報はプリンタで同じ物をたくさん「印刷する」、DVD-Rなどに大量に「記録する」という、情報処理の考え方に基づきI/O(input/output)を行う装置である。
コンピュータの機能は、欲しい情報の検索、文書の作成、計算やグラフの描画、画像の加工、絵画、音楽、ゲームなどに応用可能だ。現代の高度情報化社会において人は、コミュニケーションツールとして、コンピュータの扱える多様な情報を統合的に扱えるWebサイトを最も利用している。つまり、コンピュータにより情報を活用して、思考力・判断力・表現力を育むことで社会に積極的な態度で参画できるのだ。
現在では、ほとんどの企業がWebサイトを開設しているが、宣伝・広報にせよ、物販、顧客サポートにせよ、行っているのは全て情報発信である。その目的は、Webサイトから得られる直接の利益にある。自社に興味関心のある利害関係者に対する情報発信や、良い人材を獲得するためのリクルーティング、資料やサンプル請求、販促プロモーション、サポート情報を提供して顧客の満足度を高めてリピーター化を図るなど、新規顧客の獲得と既存顧客の掘り起こすのだ。そのためWebサイトには、その獲得しやすい仕組みが求められており、重要とされるのが検索エンジンの最適化である。検索結果の上位に表示されるように、Webサイトの内容を検索エンジンに対して正しく伝わるよう作成しないと、Webサイトは大量の情報の中に埋もれてしまい、ユーザと出会う機会さえ失う恐れがある。検索エンジンの最適化に際して意識したいのは、検索エンジンという機械の目の他に、人の目があるということだ。検索エンジンが正しく情報を読み、検索による露出機会が増えても、検索結果を見るのは人間である。内容が魅力的でなければWebサイトは表示してもらえず、表示されてもわかりづらければ離脱してしまう。最終的に使うのは人間であることを忘れてはならない。では、人にとってわかりやすいWebサイトとは、どのようなものだろうか。わかりやすいとは「理解するのが簡単である。また、見つけるのがたやすい」(広辞苑 第六版 岩波書店2008)である。つまり、ユーザに考えさせない作りになっているのが、わかりやすいWebサイトということになる。その上で、高齢者や視覚障害など特定の人への使いやすさを考慮することで、より多くの人とのコミュニケーションが可能となるのだ。わかりやすさと使いやすさとはどういうことか、実際に武蔵野美術大学(以下、武蔵美と記す)と東京大学(以下、東大と記す)の公式Webサイトの閲覧(2016年)し、体験から感じ取ったことをまとめた。
まず、両校ともにわかりやすい点は、Web サイトの概要を表現するグローバルナビゲーションに、学校概要や入学案内の他、学校関係者や企業向け情報などが配置されているところだ。多くの学校と同様の「約束事」に沿っているから、Webサイトの構成がわかりやすく、知りたい情報を見つけるのがたやすい。
逆に両校ともわかりづらいのは注目記事の扱いだ。東大では注目記事のサマリーがスライド表示される。クリックできるのがスライドエリア全体ではなく、「続きを読む」のテキスト部分だけなのは使いづらいし、サマリーがスライドするのは落ちついて読めない。本学のほうは「SPECIAL」が該当記事だろうが、「SPECIAL」の意味を考える時間が必要だ。サムネールの大きさ、テキスト量がばらばらで見づらく、関係者以外はロゴを見て考え込むかもしれない。ただし、各項目のエリア全体がクリックできるようになっているのは救いである。テキストベースWebブラウザのLynxletで検索エンジンの目をシミュレートして見ると、東大はサマリーの内容がわかるほど書かれているのに対し、本学は短い項目名が並んでいるだけなのだ。これでは検索結果ページからの流入で不利になる。
両校の特筆すべき違いはレイアウトである。本学はレスポンシブデザインにより多くのデバイスで使いやすくしている。余白を多くとり情報が目立ってわかりやすい。ただ、ページ全体を表示するにはスクロール範囲が多く使いづらい。東京大学のほうはコンピュータ用デザインしか用意されていないが、情報の隙間を詰め、少ないスクロールで全体が見られるようになっている。コンテンツ量が多いので階層が深く、サイドバーにメニューを設けているが、リンク先はページ内にある各カテゴリと同じである。このような仕様は、前時代の独自開発したCMSに見られる特徴だ(例:大成建設 http://www.taisei.co.jp)。急いでいるユーザにとって、まどろっこしい。