コンピュータの歴史を遡ると、古代の沈没船から発見された、青銅製の歯車式の道具「アンティキティラ島の機械」に辿り着くという説がある。その機械の内部には、複雑な歯車の構造があり、歯車による入力と出力の自在な変換が可能となっていたのだ。それが蒸気機関と結びついたとき産業革命が興り、数字と結びついたときコンピュータは生まれたのである。
19世紀の終わり頃に登場した小形電気モーターにより、1942年に初めてコンピュータと呼ばれる電子計算機「ABC(Atanasoff Berry Computer)」が誕生した。しかし、プログラムがハードウェアに固定されていて汎用性がなかったのだ。後に数学者のノイマンが「プログラム内蔵方式」という手法を推進し、ハードウェアに外部から命令を与えて実行させるといった「ソフトウェア」の概念を確立した。この方式を採用し、1946年に誕生したのが“ノイマン型コンピュータ”「EDSAC」である。汎用性の高いこの方式は、記憶装置に外部からの命令を記憶、必要に応じて命令を読み込み、処理し、出力するという、今現在のPCを含めたコンピュータの原型となっている。
1951年に、世界初の商用コンピュータ「UNIVAC I」が発売された。初の事務処理用途のコンピュータでもあるが、当初のプログラミング言語は2進数による直接記述で複雑すぎた。そしてトランジスタが登場するとコンピュータは急速に小型化し、OSの原型に相当する制御モニタが発達する。1960年には事務処理向けプログラミング言語 COBOLが開発されて、科学技術計算や研究用以外の一般企業の事務処理にも利用されるようになったのである。1964年に、ICを採用した汎用機 IBM/360が誕生して、処理の高速小型化、応用分野の拡大が起こる。
1965年には、CPUが1枚の基板に収まるミニコンピュータが登場し、プログラムや周辺装置の動作管理を行うOSが出現して、BASICやPASCALなどの言語が発達した。この頃からソフトウェアそのものが商品として認められソフトウェア産業が興り、通信回線を用いてコンピュータを使ったデータ交換が行われるようになる。コンピュータを用いた事務処理が普及し、情報ネットワークの整備が進み、重工業中心の社会から情報・情報流通性が認識され、「脱工業化社会」が到来したのである。
1971年には、ICの集積度を上げたLSIによる小型・低価格で大量生産が容易なマイクロプロセッサが誕生し、1972 年にはC言語か開発される。1977年には、Apple社が現在のPCの先駆けとも言うべき「AppleⅡ」を発表してアメリカでPCが普及し、1981年にIBMによって発売された「IBM PC」により世界中にPCが普及していく。それと同時にデータベースが普及する。
1980年に入ると、装置の小型化、高速化が一段と加速し、生活家電への組み込みコンピュータとしての利用が進むようになる。コンピュータ同士が通信しながら処理を進めるコンピュータネットワーク技術が発展し、WANやLANなどが構築されるようになり、画像処理や情報通信技術が発達する。日本では全角文字(日本語)での情報処理も可能となった。
1990年代には、情報通信の国際化が進展し、インターネットの商用化が始まり、教育の情報化も推進されることになる。コンピュータは計算機からコミュニケーションツールへとなったのである。2000年代には、モバイル/ウェアラブル・コンピュータが普及し、高度に情報化されたインターネット社会となる。
そして現代、モノに通信機能が備わり、ネットワーク技術とセンシング技術を活用して、あらゆる機器をネットワーク化する IoT(Internet of Things)が普及し始めた。例えば、インターネット経由で会社から自宅のエアコンのオン・オフを切り替えられるようになったのである。将来は、真のIoT機器として、冷蔵庫の中身を監視していて必要な物が少なくなってきたら自動的に注文する冷蔵庫が誕生するだろう。利用者は生活が便利になり、企業側はリアルタイムに稼働状況を知ることでサービス改善、製品開発に活かせるといったメリットがある一方、機器やシステム、サービスの供給者および利用者を対象として、サイバー攻撃などによる新たなリスクが懸念される。将来、人間を計測して動作する照明が誕生するかもしれない。脳波を測定して睡魔が訪れてきたら暗くし、目覚めに最適な状態の時に明るくする。就寝時の血圧と心拍をモニタリングし、異常があったら119番通報してくれるようなものである。現在の個人情報にDNA情報のような人間の尊厳に関わるものが含まれるようになるかもしれない。生体認証技術の向上、ネットワークプロトコルも進化するだろうが、「人間の尊厳法」が必要となるかもしれない。何より、人間らしく生きるとはどういうことか、そういう教育が大切になってくるのではないだろうか。
<参考>
コンピュータの歴史 http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/history/history_ct.html
コンピュータ博物館 http://museum.ipsj.or.jp/index.html